フロントローディングの問題点

手戻りによる無駄なコスト増加を防ぐために、出来るだけ設計の初期段階でしっかり干渉チェックなどをやっていく。

最初にかかる手間とコストは大きいけれど、建物が完成するまでのトータルで考えると、結果的にはコストを抑えることが出来る。

これがBIM(ビム)でよく出てくる「フロントローディング」という言葉が持っている意味です。

最初にかかるコストが増加することは間違いないですけど、事前検討しなかった場合に比べると効率が良い。

これは考え方によっては非常に優れた手段です。

コストが低くなる可能性があることにプラスして、さらに手戻りが減る訳ですから、工期に与える影響も少なくはないはず。

もちろん、仕事が理想的に流れていけば、という条件はつきますけど……

それほど優れた手段であれば、もう全ての建物がBIM(ビム)を導入してフロントローディングすれば良いんじゃないか。

と、そんなことを考えてしまいませんか?

でも現実はそうではなくて、少しずつBIM(ビム)も浸透してきていますが、全ての建物が採用している訳ではありません。

便利で低コストならあっという間に普及するはずで、それが現状出来ていないのはなぜか。

今回はそのあたりの問題点を考えてみることにします。


■負荷が高すぎる

フロントローディングが全ての建築プロジェクトで実現しない原因は、まさにその特徴にあると私は思っています。

最初に負荷をかけて事前に検討をしっかりと行う。

こうして書くのは簡単なことで、私にも出来ることなんですけど、実現するために必要なパワーが大きすぎるんです。

特にRevit(レビット)などの3DCADを使って、BIM(ビム)を実現しようとした場合には。

だからフロントローディングを実現することが難しい場合も多い、というのが現実ではないかと思います。

理想と現実の間には、しばしば埋めがたいギャップが存在します。

建物を設計する為には、意匠・設備など様々な部分を調整して、不整合なくまとめていくべきである。

これは設計をする際の理想的な話です。

だから私も書くことは簡単ですけど、それが出来ているかというと、残念ながらそんなことはありません。

いや、一度も完璧に出来たことなどない、と言った方がより正確な表現かも知れません。

正論であればある程、言うのは簡単で実行するのは難しいものです。

それが理想と現実のギャップであって、フロントローディングは少し理想的な話に近いものになっているのではないか。

実務をやる側としては、少しそんな感想を持ってしまうんですよね。

 

■良く見かけるグラフでも

フロントローディングという言葉を調べると、大抵は以下のようなグラフを目にすることになると思います。

 

フロントローディングのグラフ

 

BIM(ビム)セミナーとかに行くと、必ずと言っていいほどパワーポイントのスライド序盤に登場するグラフです。

これは何かというと、プロジェクトが進行するにつれて変更にかかる労力コストが大きくなる、という事実を視覚化したもの。

そこに設計業務のグラフを、現状の業務量と理想的な業務量として重ねている訳です。

このグラフでは、設計業務を前倒しすることによって、コストに与える影響が少なくなりますよ、ということを伝えたいんです。

確かにこれは正論だと私も思います。

でも、フロントローディングということで、設計の序盤に大きな負荷がかかることもまた事実です。

設計者としても別に今までデタラメに設計をしてきた訳ではなく、しっかりと検討・調整しながら設計をしてきました。

少なくとも私が知っている中ではそうです。

そこに突然「フロントローディングだから設計に負荷をかけましょう」と言われても、はいそうですか、と簡単に言えませんよね。

今まででも充分に検討や調整をしながら設計をしているのに、何を今さらフロントローディングなのか。

そんな意見があってもおかしくないですよね。

 

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