干渉チェックは誰がやるべきか
建物を建てる際には、施主・設計・施工という大きなカテゴリーに分かれ、それぞれの役割を果たしていくことになります。
施主はお金を支払うことがメインと思われますが、どんな建物を望んでいるのかを明確にする役割も持っています。
これが結構重要な役割なんです。
明確なビジョンや要望がないと、実際に建物を建てる側としては、どうするのが良いのか結構困りますから。
設計はそうした要望を引き出し、なおかつプロとしての意見を盛り込んだ使い勝手の良い建物を設計する役割を。
施工はその設計意図を細かい部分まで理解して、事故を起こすことなく約束の日時までに建物を完成させる役割を。
施主はともかくとして、設計と施工はそれぞれの分野でエキスパートと呼ばれる人達が業務を遂行していきます。
お金を支払って素人に仕事を依頼をする人はいないので、皆がエキスパートなのは当然のことですけど……。
とにかくそうしたプロフェッショナルが、役割を分担してプロジェクトを進めていくことになります。
■違う立場だから
設計と施工はそれぞれプロとして、それぞれの業務をしっかりとこなしていくことが求められています。
まあこれはプロだから当然の話ですが、細かい話をすると施工と設計はそれぞれ違う立場にいる、ということにもなってきます。
これはかなり大きなポイントです。
それぞれ違う立場なので、3DCADのメリットとも言える干渉チェックを誰がやるのか、分担が曖昧な状態になりがちです。
この業務は結構大変で、誰がやるかによって仕事量が大きく変わってくるので、全然細かい話ではありません。
もちろん「今まで通り、干渉チェックなどやらない」という選択肢も、かなりの確率であるんですけど……
今回はRevit(レビット)を使うことを前提で書いているので、まあその選択肢は考えないでおくことにします。
Revit(レビット)で3Dモデリングをして、フロントローディングの概念を実現する為に干渉チェックを行う。
これは理想的な話で、実現すれば素晴らしいことだと思います。
だけど、フロントローディングの概念に「設計が早期検討をすることで施工が楽をする」みたいなニュアンスしかないとしたら……
恐らくフロントローディングの考え方は浸透しないのではないか、という話は以前にも書きました。
■確かに効果はあるけど
Revit(レビット)を使ってパースを作成したり、設計図を発行するのは基本的に設計者の役割です。
だけど今のところ、設備との干渉チェックをRevit(レビット)で行うことが設計の仕事かどうか、明確にはなっていない。
少なくとも私はそんなイメージを持っています。
もちろん不整合のない設計図を発行することは、基本的には設計者がプロとしてやるべき業務でしょう。
しかし、ある程度のレベルまで整合がとれた設計図があれば、施工段階でそれを解決して問題なく建物は完成します。
まあその「ある程度」の巾がどれだけなのか、という部分に個人差があって、そこが難しいんですけど。
少なくとも「干渉チェックによって、全ての部分が完璧に整合されている設計図が必要」というのは、理想的すぎる話です。
もちろん理想を追求することは大事なことですけど、それが現実とかけ離れすぎるのは危険です。
そうでなければ、施工にも同じように「全く手戻りのない完璧な施工を実現するべき」みたいな話が出ますよね。
打設したコンクリートを少し壊すなどあり得ない、みたいな。
これも現実的ではない話なので、そんな話をいくら進めても、現実に沿っていない以上苦しいですよね。
少し話が違う方向に進みそうなので、元に戻すと……
3DCADを使って干渉チェックをすることは、確かに効果があるのは分かっているけれど、ではそれを誰がやるのか。
今までは干渉チェックをやらないで建物を建ててきたので、大きな手間をかけてまでそれが必要なのか。
そのあたりが課題になっているんじゃないかと思います。
次回は、もっと干渉チェックを一般的にする為に、どんなことが必要になってくるのかを考えてみたいと思います。