不具合を検証するタイミング
前回は3DCADを採用する大きなメリットである「干渉チェック」について、簡単に説明をしてみました。
CADの中で納まっていないものは、基本的に実際の施工段階でも納まっていない状態になる……
これは恐らく手描きの時代から変わることのない、図面の基本的なルールではないかと思います。
CADの中では納まっていても、実際の現場ではそう図面通りにいかない、みたいなところは残念ながら結構あります。
施工手順の問題があったり、狭くて施工できない、手が入らないなどの問題は、CADではなかなか分からない要素ですから。
「図面通りになんて出来ない」とならないように、施工条件などを考えながら描いていくのは人の役目なんです。
しかし逆に、CAD内で納まっていないのに実際の現場では上手く納まっている、というパターンはほとんどありません。
図面はイマイチだけど現場では何とかなってるんじゃないか……とか思いつつ見に行くと、まあ見事なくらい現場もイマイチになってます。
だからこそ、建物を建て始めるよりも前の設計段階で、色々な納まりを検討しておく必要があるんですね。
また、そうじゃないと手間をかけて図面を作成する意味がないですから、それで良いのだとも思います。
■見映えが変わってしまう不具合
取合い部分の納まり検討不足が原因で、現場での施工がやり直しになってしまい、材料が無駄になる。
それは結構ある話ですけど、まだその程度であればマシ、と思えるような場合も時にはあります。
それがどんな場合なのかというと、建物の見映えとか使い勝手を変えなければならない場合です。
梁とダクトが干渉していてどうしようもない場合には、梁を避けてダクトを通すために天井を下げるとか。
扉をつけようと思ったら、梁が想像以上に(という表現をプロがしてはいけませんが)下がっていて、扉と干渉するとか。
その場合は低い扉を製作しなおすか、取付が出来る位置まで扉を移動するなどで何とか納めるしかありません。
もう本当に「何とか納める」という感じです。
施工やり直しによってお金と手間を余分にかけて、さらに当初の計画とは違う見映え・使い勝手になってしまう。
これは建築のプロとして恥ずかしいことなので、出来るだけそうした状況にならないようにしなければいけません。
そんな状況にならない為に、3Dモデリングデータを使った干渉チェックを利用していく。
そこが重要なポイントになります。
■設計段階でやるべきなのか
そういう細かい納まりチェックという話は設計ではなく、現場で作図・検討する「施工図」の役割ではないのか。
と、そんな意見もきっとあると思います。
確かに現場で納まりを検討する際には、施工図と製作図をメインにして進めていくことになるはずです。
でも大きな干渉、例えば「梁が天井から出ます」みたいな話は、設計段階で検討しておくべきだと私は思います。
なぜかというと、それは細かい納まりでも何でもなくて、意匠にも大きく絡む要素になるからです。
施工段階でそうした問題が発覚した場合には、もう天井を下げるなどの対処しか出来ない状態です。
先程も書いたように「何とかして納める」状態。
でもそれが設計段階であれば、梁の大きさを再度検討するとか、ダクトサイズを再検討するなどが可能です。
つまり「何とかして納める」ではなく「各種検討して納まりを決める」であり、より意匠を考えた対処をすることが可能なんです。
建物を建てるプロジェクトの初期段階であればある程、そうした問題点の解決方法は選択肢が多い状態です。
しかも、コストに与える影響が少なくて済む、もしくはコストに与える影響がゼロである場合も多いです。
でもプロジェクトが進行して施工段階に進んでいくと、問題解決の選択肢は狭くなっていき、それにかかるコストも増えていきます。
例えば、ドアを工場で作って現場に持ってきたら、実は梁に干渉している為に納まらなかったとします。
そうすると、工場で作成してきたそのドアは無駄になってしまい、さらに納まるドアをもう1つ製作するなどの処置が必要になってきます。
これが設計段階であれば、ドアの高さをCAD上で修正するだけで済む話なんですけど……
実際に建物が出来てくるとそうもいかず、「壊して作り直し」がどんどん増えていくことになります。
これではコストがかかるのも仕方がないですよね。